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汗の研究 汗アイコン汗腺の収縮機構と新制汗成分

発汗時の汗腺の収縮メカニズムの解明と、新たな制汗成分を発見
~IFSCC2023でポスター部門最優秀賞 受賞~
次世代制汗剤の開発や発汗機能障害の研究への応用に期待

大阪大学大学院薬学研究科 先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座の研究グループは、ヒトが発汗する際に、どのような機構で汗腺の収縮が起こっているかを明らかにしました。汗腺の収縮に重要な筋上皮細胞上にギャップジャンクションを構成するコネキシン(CX)が多く発現していること、発汗時の汗腺の収縮にはそのギャップジャンクションが大きく関与していることを見出しました。今回、ギャップジャンクションの機能を止める薬剤カルベノキソロン(CBX)によって汗腺の活動が抑制されることを確認しました。さらにCBXの類縁体のグリチルリチン酸モノアンモニウム(GMA)が実際にヒトの温熱性発汗や精神性発汗の両方を抑制することを発見しました。 また、本内容は、「第33回国際化粧品技術者会連盟バルセロナ大会2023」(The 33rd IFSCC Congress 2023 Barcelona)*1において、で2023年9月4日~7日(スペイン・バルセロナ)にて発表し、全449件(口頭発表:76件、ポスター発表:373件)の中から、ポスター部門で「最優秀賞」を受賞しました。

*1…The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists (IFSCC)2023
タイトル:Next-generation antiperspirant technique: Controlling the contraction of human eccrine gland
発表者名:Takeshi Hara, Kie Nakashima, Ayumi Kyuka, Hiroko Kato, Fumitaka Fujita, Atsushi Tanemura, Yukinobu Nakagawa, Hiroyuki Murota, Ichiro Katayama, Kiyotoshi Sekiguchi

研究の背景

近年、世界規模で平均気温が上昇していることもあり、過剰な発汗は発汗機能の障害を持つ多汗症患者だけでなく、発汗障害のない生活者にとっても不快に感じるものになり、QOLの低下に繋がっています。発汗を抑える簡便な方法としては、制汗剤がよく利用されています。制汗剤に含まれるアルミニウム塩が汗腺に蓋をすることで、物理的に発汗を抑制するメカニズムです。しかし、マンダムが実施した制汗剤使用者への調査*4によると、3人に1人がその効果性等に満足しておらず、更なる制汗の機能性の向上が望まれています。従来とは異なる新たな制汗技術の構築に向け、本研究グループではヒトの汗腺を用いて、ヒトの汗腺が発汗時に収縮することで、皮膚表面に汗が押し出されることを明らかにしてきました。しかしながら、その詳細なメカニズムについては不明な点も多く、また発汗を抑制する効果的な成分も明らかになっていませんでした。

研究成果1 筋上皮細胞にギャップジャンクションを構成するコネキシンが多く存在し、発汗時の汗腺収縮に大きく関与していることを発見

汗腺の収縮に必要な筋上皮細胞にギャップジャンクション*1を構成するコネキシン*2が多く存在した。発汗時の汗腺の収縮に必要な筋上皮細胞にギャップジャンクションを構成しているCXが発現していることを明らかにし、その中でも特にCX43が筋上皮細胞上に多く分布していることが分かりました(図1)。また、ギャップジャンクションの阻害剤であるCBXが筋上皮細胞の動きや汗腺の活動を抑制することを確認しました。これらの結果から、発汗時の汗腺の収縮には筋上皮細胞にあるギャップジャンクションが重要な因子であることが明らかとなりました。

*1 ギャップジャンクション 隣り合う細胞と細胞をつなぎ、水溶性の小さいイオンや電気的信号を通過させる細胞間結合のこと。
*2 コネキシン ギャップジャンクションを構成するタンパク質のこと。

(図1)汗腺の収縮に関与している筋上皮細胞に存在するコネキシン(CX、図左)と筋上皮細胞上(紫色)に多く分布するCX43(図右・矢印)

研究成果2 グリチルリチン酸モノアンモニウム(GMA)が
ワキと手の平からの発汗の総量を減少させることを確認

CBXの類縁体であるグリチルリチン酸モノアンモニウム(GMA)*3を用いて、運動負荷や精神的負荷による実際の発汗に対する制汗効果について、発汗挙動をリアルタイムに観察できる発汗計を用いて検証しました。その結果、GMAをワキに塗布することで運動による発汗開始を遅らせ、15分間の運動による発汗の総量を減少させました(図2)。また、GMAによって発汗の挙動(振幅)が抑えられていることから、実際のヒトのワキでも汗腺の動きが抑制されていることが示唆されました。さらに、5分間の暗算による精神的負荷を与えた際の手の平の発汗もGMAの塗布によって抑制されることが明らかとなりました(図3)

*3…グリチルリチン酸モノアンモニウム(GMA) 生薬の一つである甘草から抽出される成分。

(図2)運動時のワキの発汗挙動
(図3)暗算時の手掌の発汗挙動

Future Vision今後の展望

発汗に関連する多汗症の解明や治療につながると期待

本研究によって見出された新たな制汗技術は汗腺に直接作用することにより制汗できるもので、新たな機能をもった制汗剤の開発や従来の制汗技術との組み合わせにより更なる制汗効果の向上が可能になると考えられます。また、発汗における汗腺の動態機構がさらに解明されれば、発汗に関連する病気(多汗症)の解明や治療につながると期待されます。