TRPチャネル
TRP chanel
熱い、冷たい、痛い…などを“感じる力”の正体はTRPチャネル
温度・刺激・感覚は人によって異なり、それは日常的に感じているものだと思います。これは細胞の“感覚センサー”TRPチャネルが反応して起こっていることなんです。
TRPチャネルは五感とは別の、温度や化学刺激を感じ取る細胞の感覚センサーです。
このセンサーは昆虫~ヒトに至るまでほぼすべての生物に備わっており、生命維持に欠かせない機能のひとつです。
TRPチャネルにはいくつも種類があり、人間のほとんどの細胞にいずれかのTRPチャネルが存在しています。
マンダムではこのTRPチャネルに着目し、人間の感覚を大事にした研究開発を行っています。
マンダムのTRPチャネル研究事例
肌が“心地よさ”を感じる理由とは?
マンダムは2005年からTRPチャネル研究に取り組み、製品開発に応用。不快感を減らし、快適さを高めるものづくりを続けています。
TOPIC① 不快刺激の低減
ピリピリ感などの“肌が感じる不快”を、やさしく包み込む処方設計
肌が敏感に反応する刺激――その不快感を軽減するために、マンダムはTRPチャネルの働きに着目。刺激の受け止め方をコントロールすることで、不快刺激を減らし、より快適な使用感を実現しています。
化粧品などでまれに刺激を感じることも…
ヒリついたりチクチクしたり感覚刺激は人それぞれ…
炎症が起こっていなくても不快に感じる場合があるのは化粧品に使われている成分がTRPチャネルを刺激しているから。
そういった感覚刺激にTRPV1やTRPA1が関与していることを見出しました。
化粧品の成分以外でも鼻に水が入ったときも痛みを感じませんか?
これもTRPチャネルが反応しているからです。
体液や細胞液よりも浸透圧の低い水が体内に入ることでTRPA1が活性化して痛みを生み出しています。
マンダムの独自研究により、刺激の度合いをTRPV1とTRPA1の反応ではかる評価方法を開発し、TRPチャネルの反応を活用することで、より快適に使用できる製品の開発が可能になりました。
TOPIC② 清涼感の追求
“ひんやり”は、ただ冷たいだけじゃない。心地よさを科学する
ミントなどの植物由来成分がもたらす清涼感。マンダムは、TRPチャネルの反応を活かしながら、強すぎず心地よい“ひんやり感”を設計。暑い季節や運動後など、肌が求める爽快感を、ちょうどいいバランスで届けます。
化粧品でもスーッと爽快な感覚が欲しい…
暑いとき手軽に清涼感を感じたい…
スキンケアやヘアケア、ボディケアなど様々なカテゴリーで
清涼感を感じる化粧品のニーズがあります。
清涼感といえばメントール。
メントールがTRPM8を刺激してひんやりとした冷たさを感じていますが、更なる清涼感を求めてメントールの量を増やすとTRPA1まで刺激し痛みなどの不快刺激を感じてしまいます。
そこでマンダムの独自研究により、冷たさと不快刺激の度合いをTRPM8とTRPA1の反応ではかる評価方法を開発しました。
ユーカリプトール、イソボルニルオキシエタノールが、TRPA1の活性を抑制し、不快刺激を低減することを明らかにし、TRPチャネルの反応を活用することで、より快適な清涼感を実現する、製品の可能性が広がりました。
TOPIC③ 免疫コントロール
肌の“守る力”に寄り添う、TRPチャネルの可能性
肌トラブルの原因となる炎症。その予防には、肌の免疫バランスを整えることが重要です。マンダムは、TRPチャネルを介した免疫調整の研究を進め、肌本来の力を引き出すスキンケア開発に取り組んでいます。
乾燥、毛穴の目立ち、ハリの低下…など肌トラブルの多くは炎症反応と関わりがあります。
このような炎症の一部には表皮角化細胞の免疫が関わっています。
そこで、その細胞内に存在するTRPM4に着目。
マンダムの独自研究により、TRPM4が表皮角化細胞の免疫反応をコントロールできることを日本で初めて確認しました。
さらに、TRPM4の活性化を評価する方法を開発。それを用いて、TRPM4を活性化する成分を探索しました。
ミネラルの一種「アルムK(ミョウバン)」がTRPM4を活性化することを確認し、また、アルムKを用いることで、表皮角化細胞の炎症シグナルが抑制されることも確認しました。
TRPチャネルの反応を活用することで、新しいアプローチによるスキンケアの開発が可能になりました。
実際に「アルムK配合ローション」を用いた連用実験結果
TOPIC④ 評価法の確立
“感じる”を測る。感覚の科学に挑む独自の評価技術
感覚は目に見えないもの。でも、科学的に評価することは可能です。マンダムは、動物実験に頼らない評価法の確立にも取り組んできました。その中でTRPチャネルの反応を定量的に測定する独自の評価法を開発。製品の快適性を、感覚の裏付けとともに検証しています。
TRPチャネル研究の第一人者 名古屋市立大学 なごや先端研究開発センター 富永 真琴 特任教授
とマンダムで共同研究を行っています。
〈プロフィール〉
名古屋市立大学 なごや先端研究開発センター 富永真琴特任教授 / 愛媛大学医学部卒、京都大学大学院医学研究博士課程修了, 博士(医学)。京都大学、生理学研究所、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、筑波大学、三重大学、自然科学研究機構 生命創成探究センターを経て、現職。
2021年ノーベル賞を受賞したTRP(トリップ)チャネル研究の権威であるカリフォルニア大学教授の David Julius(デイヴィッド・ジュリアス)氏のチームに、TRPV1チャネルが発見された1997年当時に日本から唯一参画。TRP(トリップ)チャネル研究の第一人者である。温度受容・侵害刺激受容の分子機構解明を目指してTRP(トリップ)チャネルの研究を行っている。
辛い?熱い?感覚の謎とTRPチャネル
私がTRPチャネル研究に関わるきっかけは、カプサイシン受容体の発見でした。後にそれが温度センサーだとわかったとき、“生命はどうやって温度を感じるのか”という謎に強く惹かれました。感覚の不思議を解き明かすことが、今も私を突き動かしています。
TRPチャネルが切り拓く医療の未来
TRPチャネルが痛みや温度を感じる仕組みを解き明かすことで、鎮痛薬やドライアイ治療薬など、医療の新しい選択肢が生まれつつあります。まだ課題はありますが、TRPチャネル研究が人々の健康に役立つ日が来るといいなと思っています。
人類の冬眠は夢じゃない!?—TRPチャネルが鍵
体温や代謝をコントロールできれば、人間を冬眠させることも夢ではないと思っています。TRPチャネルの研究は、まさにその可能性を秘めています。長期宇宙旅行や救急医療でのゴールデンタイム延長など、SFの世界だと思っていた未来に一歩近づくものです。まだ研究段階ですが、生命の可能性を広げる挑戦が始まっています。
TRPチャネルを実際に体験してみよう
“感じる”を科学する。TRPチャネルの世界を体験してみよう!
身近にあるものでTRPチャネルを活性化できる!あなたが感じるその感覚、TRPチャネルのしわざです。
テーマ① 冷たさの足し算
用意するもの:ミントタブレット、冷水
やり方:
① 冷水を一口飲んで、冷たさを確かめる
② ミントタブレットを口に入れてなめる
③ ミントタブレットの「スースー感」を感じたら冷水を口に入れる
④ 「冷たさ」の感じ方がどう変わるか、試してみよう!
ミントタブレットを一緒に食べた方が、冷水だけよりも冷たく感じませんでしたか?
これはミントの成分がTRPチャネル(TRPM8)を刺激して、冷たさを感じやすくさせるから。
冷水とミントの“感覚の足し算“で、より冷たいと感じます。
テーマ② “辛い”と“熱い”の関係
用意するもの:温かい紅茶、生姜(すりおろしやスライス)
やり方:
① 紅茶を2杯用意(1杯は生姜入り、もう1杯はなし)
② それぞれを飲んで、どちらが「温かく」感じるか比べてみよう!
生姜に含まれる成分がTRPV1チャネルを刺激すると、「熱い!」と感じる神経が活性化。実際の温度は同じでも、生姜入りの方が“熱く(温かく)”感じやすいのです。
テーマ③ “水が入って鼻ツーン”を防ぐには?
用意するもの:水道水と鼻うがい専用液(市販)、または湯冷ましと食塩
やり方:
① 市販の鼻うがい専用液を手順通りに、または湯冷まし(沸騰後40℃くらいまで冷ましたぬるま湯)と食塩で0.9%濃度の塩水を作る
② ①で作った液体で鼻うがいをしてみよう!鼻がツーンとするかな?
水道水は浸透圧が低く、そのままの水で鼻うがいをするとTRPチャネルが刺激されて「ツーン」と感じることがあります。専用液や0.9%の塩水は体液に近い成分なので、刺激が少なくて痛くなりにくいのです。